旅先で見つけた記念メダルが繋ぐ、人生の輝きと家族の絆
旅先で見つけた記念メダルが繋ぐ、人生の輝きと家族の絆
鮮やかな光沢を放つ、たくさんの丸いメダルたち。それらは特別なショーケースに丁寧に並べられ、静かにそれぞれの物語を語りかけているようです。今回お話を伺ったのは、長年、旅先で手に入れた記念メダルを集め続けている藤本さんです。藤本さんのコレクションは、単なる金属の塊ではなく、彼女の人生の道のり、そして大切な人たちとの絆が刻まれた宝物でした。
最初の一枚、そして続く旅
藤本さんが記念メダルを集め始めたのは、今から三十年以上前、初めて家族三人で訪れた北海道旅行でのことでした。幼かった息子さんの「これ、欲しい!」という無邪気な声に促され、展望台の売店で小さな記念メダルを購入したのが始まりだそうです。
「あの時のメダルは、今見ると少し色褪せていますが、私の宝物です」と、藤本さんは優しく微笑みました。「初めての家族旅行で、息子が初めて自分で選んだお土産。あの時の夫と息子の笑顔が、メダルを見るたびに鮮やかに蘇ります。」
その旅行をきっかけに、藤本さんは旅先で記念メダルを探すようになりました。行く先々の観光地や施設には、それぞれ特徴的なデザインのメダルが販売されていました。息子さんが少し大きくなると、一緒にメダル選びをするのも旅の楽しみの一つとなりました。息子さんの「こっちの色がいい」「この絵柄がかっこいい」といった声を聞きながら、親子で意見を交換し、一枚のメダルを選ぶ時間。それは、旅の記憶だけでなく、親子のコミュニケーションの時間でもあったと言います。
メダルに刻まれた、忘れられない瞬間
藤本さんのコレクションの中には、特に思い出深いメダルがいくつかあります。
一つは、夫と二人で訪れた、かつて新婚旅行で訪れた場所で手に入れたメダルです。長い年月を経て再び同じ場所に立ち、若い頃とは違う視点で景色を眺め、共に歩んだ日々を静かに振り返ったこと。その時の穏やかな感動が、メダルに込められているように感じるそうです。「あの場所で、もう一度夫と並んでメダルを買えたことが、何よりも嬉しかったのです。私たちの人生の道のりを象徴する一枚だと感じています。」
また、息子さんが独立し、初めて一人で旅に出た時に送ってくれたメダルもあります。それは、息子さんが親元を離れ、自立への一歩を踏み出した証でもありました。離れていても、旅先から母を想って選んでくれたメダル。それは藤本さんにとって、息子の成長を喜び、同時に少しの寂しさを感じる、複雑で温かい愛情が詰まった一枚となりました。
失敗談もあるそうです。ある旅先で、記念メダルがあることを知らずに観光を終えてしまい、後から知って悔しい思いをしたことが何度かあったと言います。「旅行前に下調べをするようになりましたし、現地でも『メダルはありますか?』と尋ねるのが習慣になりました。これも収集を通して学んだことですね」と笑いました。
収集が教えてくれた人生の価値
記念メダル収集は、藤本さんの人生に様々な影響を与えてきました。一つは、過去の旅の記憶を鮮明に呼び起こすトリガーとなっていることです。メダルを手にするたびに、その時の気温や匂い、一緒にいた人の声までが蘇るような感覚があると言います。それは、単なる記憶ではなく、五感を通して体験した「あの頃」を再訪するような豊かな時間です。
また、メダルコレクションは、家族や友人との会話のきっかけにもなっています。リビングに飾られたメダルを見て、息子さんや夫が「ああ、あそこに行ったね」「この時はこんなことがあった」と話しかけてくることがあるそうです。メダルが、共に過ごした大切な時間を振り返るための共通言語となっているのです。
さらに、藤本さんはメダル一つ一つに刻まれたデザインや文字から、その場所の歴史や文化に改めて興味を持つようになったと言います。「メダルには、その土地のシンボルや由来が刻まれています。それを調べるうちに、旅の記憶がより深まるのを感じます」
これからも続く、人生という名の旅
藤本さんの記念メダルコレクションは、これからも少しずつ増えていくことでしょう。それは、彼女の人生の旅がまだ続いていることの証でもあります。新しい場所を訪れ、新しいメダルを手に入れるたびに、彼女の人生の物語には新しいページが加わります。
一つ一つの記念メダルは、藤本さんが歩んできた道のり、出会った人々、そして心に刻んだかけがえのない瞬間の輝きを映し出しています。それらは単なる収集品ではなく、彼女の人生そのものを象徴する、温かく、かけがえのない宝物なのです。藤本さんのメダルを見ていると、私たちの人生もまた、様々な場所で手に入れた「心の記念メダル」で彩られているのかもしれない、そんな気持ちになりました。